五重塔から発想した日本的な美をもつタワー
日本を代表するランドマークとなる東京スカイツリー。
このようなビッグプロジェクトに彫刻家である私がデザイン監修者として参加したのは
初めてのことと思います。東京スカイツリーのような象徴的構造物を造るときには、
周辺全体を美しく創造する環境造形の意識が大変重要です。
かつて私は東京湾アクアラインの換気塔(風の塔)のデザインなども手掛けたことがあり、
常に設計者と協働してきました。今回は素晴らしい設計技術者の集団である日建設計に、
私がデザイン監修として加わり、コンセプトや美しい形を一緒に考えてきました。
デザイン・コンセプトは、単純なものでなければならないと考え、「シンプル・イズ・ビューティフル」、
そして不思議な形にもこだわりました。私たちにとって不思議な建築ほど魅力的なものは
ありませんから。
東京スカイツリーの課題は、狭い場所に高いタワーを建てることでした。
東京タワーは4本の脚を広げて建っていますが、東京スカイツリーは敷地に余地が無く、
狭い場所に高いタワーを建てることになりました。
この課題をクリアし、美しいデザインを実現するヒントが五重塔にありました。
その姿は高く、美しく、日本的な美を備えており、モニュメントとしては最高のものです。
五重塔は中心の心柱を取り巻く側柱が支える日本独自の構造です。東京スカイツリーは地震や強風でも電波を発する上部が揺れないことが求められています。
そこで長い年月にも耐え建ち続けている五重塔の構造に現代の最先端技術を加え、下の方で揺れを吸収する最新の仕組みになっています。
左右対称に見えるのは3カ所 不思議なデザインが魅力
東京スカイツリーのデザインは、まず初めにいくつもの模型を作って、設計面から構造を細かく検討しながら決定しました。
そして、地上面を正三角形にし、上にいくほど徐々に丸くなるデザインが採用されました。
このデザインにすると、左右対称に見えるところが3カ所しかなく、不思議な見え方になります。
建築途中の東京スカイツリーを見た友人から「タワーが傾いているぞ」と電話があり、狙いは成功したと思いました。
私の彫刻のテーマは、日本刀のような「そりのあるかたち」がテーマです。
東京スカイツリーの不思議な見え方は、この"そり"と、少し膨らんで見える美しい"むくり"が不思議な魅力です。
※2011年3月31日付日本経済新聞夕刊に掲載されたものを再編集いたしました。
スカイツリーにある、「反り」と「起り」(そりとむくり)
「反り」とは、しなやかな湾曲のこと。
「起り」とは、ゆるやかなふくらみのこと。
右の画像をご覧ください。
スカイツリーは、一直線のデザインではありません!!
「反り」と「起り」があるのです。
日本刀と、五重塔
日本刀には、「反り」と「起り」があります。
日本刀は美しいです。しなやかで、強い、これは日本独特の美しさと言えます。
この美しさを、スカイツリーに取り入れられました。
この日本の美しい五重塔は、仏舎利塔で誰でも手を合わせたくなるような祈りの塔として造られています。
スカイツリーは未来の平和を祈る世界一の塔になると思います。
日本人の「知恵」と「技術」の総合力
構造はパイプ構造、円柱で角がありません。
これは1本1本職人の手作業で溶接されました。
誰でもできるものではありません。
日本の技術力と、知恵。
だから、スカイツリーができたと思います。
スカイツリーが完成した時は、日本は災害に見舞われ、少しずつですが立ち上がっている最中でした。
もう一度立ち直るための象徴でもある、震災の復興のシンボルにと、私は想いを託しました。
私が好きな景色
私は、「TO THE SKY」 から、スカイツリーを眺める景色が大好きです。
スカイツリーに遊びに行ったら、ぜひ「TO THE SKY」の中へ入って、上を見上げてみてください。
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